部門の貢献率を算出する方法

前回、賞与原資を店舗の実績に応じた貢献度によって、各店に配分しました。

賞与額を店舗に、貢献度に応じて配分する方法参考)

今回は、それらの店舗に配分された賞与額をさらに、その店舗内で各部門に貢献度に応じて配分するための、部門貢献率を算出する方法についての考え方を解説します。

 

<部門貢献率算出に対象となる数値>

部門貢献率は、部門の期待値粗利額に対して、どれだけの実績を上げることができたか……で計るものとします。

≪各部門期待値≫

各部門の期待値を設定します。

(期待値とは、それぞれの部門が可能とする最低限のノルマを設定するものであります)

     (売上) (日販)      (設定粗利率)      (期待値粗利額)
精肉 1050万( 35万)       28.0%          294.0万 

青果 1305万( 45万)       26.0%          351.0万   

鮮魚 1050万( 35万)       28.0%          294.0万

惣菜  600万( 20万)       59.5%          357.0万

食品 4800万(160万)       20.9%         1005.0万
   8850万(295万)

 

上記の期待値は、過去3年間の平均月間実績を参考にして、最低限の値を期待値として設定するとよいでしょう。

仮に、その売上や粗利率があきらかに低く、通常の基本ベースのレベルに満たない場合は、その期待値を修正してもよいでしょう。

例えば、通常一般相場の粗利率が28%であるといわれている部門が、何の悪条件もないにもかかわらず、過去3年間の粗利実績が26%しかない・・・・などの場合であります。

売上は年々上がる可能性がありますが、粗利率はある一定ライン以上にはならないもの……という性質があります。
例えば、
「過去3年間の粗利率平均が30%あり、今期がたまたま31%達成した」
・・・・としても、「翌年度が32%になっていくものではない」・・ということはご承知の通りです。

もちろん、
期待値の粗利率が30%のところ、その後3年間、31%の粗利率を達成し続ければ、

粗利率の期待値のかさあげを検討してもよいと思いますが……。

 

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そして部門によって設定される粗利率が違うことから、粗利率1%に対する粗利額の大きさ差が違ってくることもご承知の通りです。

粗利率1%の重みは、部門ごとに違うということです。

例えば、下記に示す部門で見てみることにします。
「粗利率の設定がそれぞれ異なる部門が、売り上げの伸びはなく同じ売上で、粗利は1%ずつ伸びた」・・・・と仮定します。

         (売上)(設定粗利率)(期待値粗利額)  (粗利率)(粗利額)  (達成率)
食品:2000万  20%  400万  ⇒  21%  420万  105.0%

精肉:2000万  30%  600万  ⇒  31%  620万  103.3%

惣菜:2000万  40%  800万  ⇒  41%  820万  102.5%

すると同じ1%の粗利率の伸びではありますが、達成率では開きが出ることになるのは当然のことです。
これは、各部門の粗利率の設定が違い、1%の重みが変わってくるからであります。

上記のように、3部門とも同じ1%の粗利率を伸ばし、粗利額は同じ20万ずつ伸ばしたとします。

しかし達成率は、設定粗利率の低い、「食品部門」が一番伸びたという実績になるわけです。

これは、逆のことも言えます。
上記の3部門が1%ずつ、粗利率が下がった場合、今度は下記のように食品部門の
達成率が低くなる・・・・ということであります。

         (売上)(期待値粗利率)(粗利額)   (粗利率) (粗利額)(達成率)
食品:2000万  20%  400万  ⇒  19%  380万   95.0%

精肉:2000万  30%  600万  ⇒  29%  580万   96.0%

惣菜:2000万  40%  800万  ⇒  39%  780万   97.5%

それぞれの部門により1%の重みが違いますが、プラスマイナスがあることを加味して公正公平なものという考え方をします。

いずれの部門せよ、1%粗利を伸ばすということは、大変なことは同じです。

それに、粗利率というのは、あまり変化が起こる性質のものではありません。
売上は年々上がる可能性がありますが、粗利率はある一定ライン以上にはならないもの……というわけです。

 

また、粗利率を戦略的に下げ、売り上げを向上させて粗利額を向上させる・・・という手段もあります。

このように、粗利額を達成させる方法は各部門さまざまですが、部門の貢献度を計るモノサシは、期待値粗利額に対する、実績粗利額の達成率で見ることにします。

≪各部門実績≫                            

上記、期待値粗利額に対しての達成率
(売上)(日販)(日販伸額)(達成率)(粗利率)         (粗利額) (粗利達成率)
精肉 

1110万(37万)2万105.7% 27.5%(▲0.5%)305.3万 103.8% 

青果 

1380万(46万)1万102.2% 26.0% ( - )358.8万 102.2%   

鮮魚 

1020万(34万)▲1万97.1% 28.5%(0.5%)290.7万  98.9%

惣菜  

660万(22万)2万110.0% 54.2%(▲5.3%)375.7万 105.2%  

食品 

4830万(161万)1万100.6% 20.9%(-)1009.5万 100.4%
    9000万                       合計 510.5%


要するに、業績を図るモノサシとして、この”期待値粗利額”を基本ベースにして、

どれだけの実績粗利額を上げることができたか
・・・・で判断するということであります。

ですから上記の店の場合、
賞与原資を一番高い割合 で配当される部門は、惣菜部、次に精肉部・・・となっていくわけです。

これが、貢献率の度合いを計る考え方です。

それでは、各部門の実績に応じて配当割合を決める部門貢献率の算出方法についての考え方について解説します

 

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≪部門貢献率の算出方法≫

まず下記のように、各部門の粗利額達成率を、ただ単純に、全部門の達成率の合計で割ったものを各部門の貢献率として見てみます。


<例> (粗利額達成率)         (各部貢献率)
精肉: 103.8% ÷ 510.5% = 20.33%

青果: 102.2% ÷ 510.5% = 20.00% 

鮮魚:  98.9% ÷ 510.5% = 19.37%

惣菜: 105.2% ÷ 510.5% = 20.60%

食品: 100.4% ÷ 510.5% = 19.66%
    510.5% 

1店舗の賞与配当額が700万として、上記各部門の貢献率を掛け配分額を算出しますと……
<例> (店舗配当額)(各部貢献率)(部門配当額)
精肉: 700万×20.33%=142万

青果: 700万×20.00%=140万 

鮮魚: 700万×19.37%=136万

惣菜: 700万×20.60%=144万

食品: 700万×19.66%=138万
    
部門に配当される額がこの額ですから・・・・スタッフ一人ひとりに配分される額には、いくらも格差がつかないものになるので面白くありません。

そこで、各部門の貢献率を計るモノサシは、下記の算式のように、達成率100%を起点に、どのくらい上がったか・・下がったか・・の割合をそのプラスマイナスのトータルからの割合として算出して計ることにしてみます。

<例> (粗利額達成率)      (各部門伸び率) 
精肉: 103.8% - 100% = 3.8%

青果: 102.2% - 100% = 2.2%

鮮魚:  98.9% - 100% =▲1.1%

惣菜: 105.2% - 100% = 5.2%

食品: 100.4% - 100% = 0.4%
                   10.5%

この各部門の伸び率を、全部門の伸び率(10.5%)で割ったものを、部門貢献率としてみます。
                 (各部門貢献率)

精肉: 3.8% ÷ 10.5%  36.2%

青果: 2.2% ÷ 10.5% = 21.0%

鮮魚:▲1.1% ÷ 10.5% ▲10.5%

惣菜: 5.2% ÷ 10.5% = 49.5%

食品: 0.4% ÷ 10.5%   3.8%
   10.5%          100.0%

 

先ほどと同じように、店舗配当額を700万として部門配当額を算出してみます。

<例> (店舗配当額)(各部貢献率)(部門配当額)
精肉: 700万× 36.2%=253

青果: 700万× 21.0%=147万 

鮮魚: 700万×▲10.5%=▲74万

惣菜: 700万× 49.5%=347

食品: 700万×  3.8%= 27万

しっかり格差がつきました。

粗利額達成率が100%を超えない部門はマイナスとなってしまいます。

「このマイナスとなった部門は、自腹を切って支払うの?」

……と思うかもしれませんが、そうではありません。

それぞれ、土台となる基本賞与はしっかり確保します。

100%を超えた部門だけ、上乗せ分の賞与額を取り合う形となり、100%を割り込んだ部門は、基本賞与支給額部分が減る……という考え方です。

これであれば、実績を上げた部門が限られた賞与原資の上乗せ部分を取り合うわけですから、しっかりと支給額に反映されて獲得できることになります。
このような方法が、各部門の貢献率を算出する考え方とします。

 

そして、各部門スタッフの頭数も違うでしょうから、この貢献率とそれぞれスタッフの評価されたポイント数をリンクさせて、部門に配分する額を決めて行きます。


このような手順で、各部門の配当額を算出するモノサシにすれば、成果による公正公平な賞与原資の配分が可能になります。

そして、この計算式を、明確に公表し、納得を得ながら、成果を上げるための努力をおしまずにやればよいでしょう。

では、次の事項「賞与額を部門とスタッフへ、貢献度に応じて配分する方法」で算出しましょう 。

 

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コメント

    • 大垣 剛久
    • 2020年 2月 07日

    教えて下さい。
    各部門の貢献率を出すのに、全部門の伸び率がマイナスの場合はどう計算すれば宜しいのですか?

    • 返信遅くなりまして申し訳ありません
      全部門が期待値に届かず5部門の全ての部門が仮に伸び率90%だったとします。

      そうすると90%×5部門で全部門の伸び率の合計が450%となり、これが店舗の伸び率100%と考えますので、各部門90%÷450%となり、イコール各部門の貢献率は20%になるとみるわけです。

      実際には各部門それぞれ少しづつ伸び率が違うでしょうから下のような計算で貢献率を見るようにしています

      <例> (伸び率)        (各部貢献率)
      精肉: 98% ÷ 470% = 20.85%

      青果: 96% ÷ 470% = 20.43%

      鮮魚: 94% ÷ 470% = 20.00%

      惣菜: 92% ÷ 470% = 19.57%

      食品: 90% ÷ 470% = 19.15%
      合計:470%

      全部門の伸び率がマイナスであろうが100%の部門やマイナスの部門が入り混じろうが、全部門の伸びつ合計を店舗の伸び率100%として見るようにしますので、単純に各部門の伸び率(達成率)から全部門の伸び率合計で割れば算出できます。

      難しいのは元となるそれぞれの部門の期待値を設定することですね。期待値が甘ければ伸び率は簡単に上がってしまいますし、期待値がきつければその逆となるわけです。

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