安売りをやめて方向転換した成功事例(経験談)

25年程前の1990年台前半、輸入自由化が緩和され、ディスカウントという価格破壊の第一次ブームが押し寄せてきました。

 

我が社では、時代の波にのり、東京足立区にディスカウント主体のスーパーマーケットを新規出店しました。低価格路線をコンセプトにして、平ケースに単品ボリューム陳列販売をし、時流にピシャリとのっかり、とてつもない売り上げを計上し、繁盛しました。

 

200坪位の小さなスーパーマーケットで、精肉売場では、牛肉の輸入規制緩和で、旨味のない輸入牛肉のボリュームパックばかり、格安で、売場を埋め尽くしました。

「牛肉が食べられればなんでもいい!」……みたいな時代でありましたので、これがまた良く売れました。

その他、どの部署でも、ありとあらゆる特売商品ばかりで店内を埋め尽くし、

定番商品は、売れ筋商品だけをわずかに品揃えする程度でありました。

 

それでも チラシをまけば行列ができ、入場制限するほどでありました。

しかしその、天国のような忙しい日々は、1~2年で変わり始めました。

そこは、スーパーマーケットが他にない地域であったこともあり、徐々に競合店が周りに出店してくると、集客の分散化がおこり、安売りチラシ合戦が始まりました

当然、売り上げは、伸び悩び、下降し始めました。

そして、そんなことを繰り返しているうちに お客様が、それらの安物は、

「しょせん、その程度の価値のものだ」

「安かろう悪かろうで、美味しくない」ということに気付き始めてきました。

それらが安い価格であることも当たり前になり、顧客も驚かなくなってきました。

 

そして少しずつ、安さだけでは売り上げは 「もうこれ以上伸びない」……ことに気付き始めてきました。

 

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地域密着型のスーパーマーケットは、商圏範囲があります。店を中心に、半径2km(徒歩500mまで)と言われています。ちょっと大きめのスーパーマーケットでも、4~5km位まででしょう。

通常この2kmの商圏内に競合店がなければ、いい商売ができ、それが田舎でなく、人工密集地であれば、最高であります。

しかし、現代の供給過剰時代に、そんな恵まれた立地条件があるわけがありません。

商圏内の人口数も決まってますから、当然、胃袋の数も、大きさも決まっています。

安売りをして「これでもか~これでもか~」と販売しても、商圏内の胃袋が消化してくれる量は、限りがあるのです。

食べられる量には限りがあるのに、”安いから”といって買っておくと、使わないまま、消費期限が過ぎてしまいます。廃棄処分となり、結局、高い買い物になってしまいます。

しかも、その商圏内に競合店が増えてくれば、その限られた胃袋を取り合う訳ですから、売り上げが減るのは、当然のこととなります。

 

ひと昔前は、「安いうちに買っておこう」などと、日持ちするものは、家にまだストックがあっても、次から次へと買ったものです。

我が家の母は、スーパーマーケットの折込チラシを、あちこち見比べて、

「醤油はあそこの店が安い」

「砂糖はあそこの店」・・・・などと、

「今買わなきゃ損だ!」・・・と

自転車で安いものを買いに、あちこち走り回ったものです。

しかし今は、そういう主婦は少なくなっているようであります。

現代の買い物の仕方は、

「生鮮品や惣菜を主に買う場合はあそこの店」

「日持ちのする加工食品を買う場合は、ディスカウントストア」・・・などと、

「今日行く店を決めたら、ある程度ひと通りのものをそこで買いそろえる・・・ような買い方が多いようです。

 

それに、家にストックがあれば、いくら安く販売していても、買わなくなってきています。

今はいつでもどこでも、安く販売したり、特売をしたりしているので、”今あわてて買う必要性がなくなってきている”からであります。

 

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そこで我が社では、店のコンセプトの転換を図りました

平ケースに単品ボリューム陳列、食品の大陳販売をメインにしたディスカウント手法の販売方法から、平ケースを3段の低多段ケースにに入れ替え、食品の大陳コーナーを減らし、定番商品の充実化を図るなどをして、きめの細かい品揃えと、商品グレードのバリエーションを豊富にしました。

安いもの・リーズナブルなもの、本物志向の美味しいものの 上中下3段階をすべてのカテゴリーに取り入れ、選べる楽しさを提供しました。

そのなかでも、一番メインに売り込んだものは、「本物志向の美味しいもの」であります。

顧客に、美味しさで満足してもらうことをコンセプトに打ち出したのであります。

 

始めは、価格が高くなったというイメージなのか、あまり売れませんでした。

商品の価値がわかる顧客は「この商品がこの値段!」…と 安さを理解してくれましたが、

この価値観を浸透させるには けっこう苦戦しました。

 

「食べ比べの試食販売」を日々行い、味の違いを感じてもらいました。

 

そうこう試行錯誤しているうちに、1年後の年末には、ディスカウントをして、行列を作っていた頃の売り上げよりも上回る、過去最高の売り上げを記録しました。

そして、一番実感していることは、安売りしていた頃のお客様の声は「お宅は安いわね~」…という声だったのに対し、「お宅のお肉や魚がいいからここに来る」…に変わったことであります。

「信頼を得るとはこういうことなのかな~」…とそのとき感じました。

ですから、安さがメインの激安販売手法でなくても、お客様に価値観と値ごろ感の満足を与えられ、売り上げ・利益を向上できることを実感しました。

これが、我が社の安売り脱却成功事例であります。

では次回は「日本人は安さだけでなく、美味しさや利便性、安心安全にお金を出す」について解説します。

 

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