賞与額を部門とスタッフへ、貢献度に応じて配分する方法
賞与額を貢献度に応じて、部門とそれぞれのスタッフに配分する方法を解説します。
前回、部門貢献率を算出する方法の考え方を解説しました。(「部門の貢献率を算出する方法」参照)
その貢献率をただ単に、店舗の賞与原資に掛けただけでは、人数の多い部門は頭数で割ると、一人当たりの支給額が少なくなってしまいますし、
頑張って評価を受け、高いポイントを獲得したたにもかかわらず、部門に配分された賞与原資をただ頭数で割ってしまえば、頑張った人とそうでもない人との格差がつけられません。
そこで、それらのことをきっちりと網羅し、実績に応じて、公正公平にしっかりと格差をつけて賞与額を部門に配分し、さらにそれぞれスタッフに、貢献度に応じて、評価ポイントごとに配分できる算出方法の考え方を解説します。
<部門配当額を算出する方法の基本的な考え方>
まず、基本的な考え方を、簡単な数字の例を挙げて説明します。
店舗の賞与配分額が100万円だとします。
そして、5つの部門の粗利達成率が同じで、貢献率が全く同一と仮定します。
この貢献率を、賞与原資100万円すべてに掛けて算出するのではなく、
ひとまずこの100万円を、成果額と均等額に振り分けます。
均等額とは、すべて均等に分けられ支給される部分で、
成果額とは、貢献度に応じて配分され支給される上乗せ部分と考えてください。
成果額と均等額の割合設定は、各企業によって、それぞれ自由に設定します。
ここでは、成果額を20%、均等額を80%として設定します。
成果額:100万×20%=20万
均等額:100万×80%=80万
下の表でわかるように、
賞与原資が100万円のとき、均等に配分される額は、5部門それぞれ、(均等額80万÷5部門)=16万ずつになります。
成果額は、貢献率がどの部門も20%で同じと仮定してあるので、この表では(成果額20万×貢献率20%)=4万円ずつ上乗せされています。
ですので、下の表では、どの部門も、20万円ずつ配分されることになります。
賞与原資額 100万
精肉 | 鮮魚 | 青果 | 惣菜 | 食品 | 小計 | |
成果額 | 4万 | 4万 | 4万 | 4万 | 4万 | 20万 |
均等額 | 16万 | 16万 | 16万 | 16万 | 16万 | 80万 |
部門配当額 | 20万 | 20万 | 20万 | 20万 | 20万 | 100万 |
本来この、成果額になる部分に、それぞれの部門の貢献率を掛けて算出しますので、実績を上げた割合が多ければ多い部門ほど、均等額に上乗せされるような形になります。
要するに、成果額20%の合計16万円を、貢献した割合に応じて取り合い、均等額に上乗せされるという考え方です。
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<部門配当額算出シュミレーション>
現実では上記のように、すべての部門が同じ達成率になることはありませんので、
現実をふまえ、各部門の達成率に差があり、尚且つ、達成率100%を下回る部門があるときを仮定してシュミレーションしてみます。
まず、粗利達成率が下記のようだと仮定します。
惣菜部が100%を下回っています
このとき貢献率は右のようになります。
(粗利額達成率) (伸び率) (伸び率計 (貢献率)
精肉部 101.2%-100%= 1.2% ÷ 3.7%= 32.4%
青果部 102.6%-100%= 2.6% ÷ 3.7%= 70.3%
鮮魚部 101.9%-100%= 1.9% ÷ 3.7%= 51.3%
惣菜部 98.0%ー100%=▲54.2% ÷ 3.7%=▲54.2%
食品部 100.0%-100%= 0.0% ÷ 3.7%= 0.0%
3.7% 100%
この貢献率に、賞与配当額100万の20%分の成果額(20万)を掛けたそれぞれの部門の成果額に、80%分の均等額80万を5部門で均等に割った、各部門の均等額16万を足すと、それぞれの部門の配当額が算出されるということになります。
(貢献率) (成果額) (各部成果額) (均等額) 部門配当額
精肉部 32.4% × 20万 = 6.5万 + 16万 =22.5万
青果部 70.3% × 20万 = 14.1万 + 16万 =30.1万
鮮魚部 51.3% × 20万 = 10.3万 + 16万 =26.3万
惣菜部 ▲54.2% × 20万 =▲10.8万 + 16万 = 5.2万
食品部 0.0% × 20万= 0万 + 16万 = 16.0万
下の図はわかりやすく、土台となる均等額を下に、
上乗せされる成果額を上にして表示してみました。
精肉 | 青果 | 鮮魚 | 惣菜 | 食品 | |
成果額 20万 +10.8万 | 6.5万 | 14.1万 | 10.3万 | 0.0万 | |
均等額 80万 |
16万 |
16万 |
16万 | 16万ー10.8万 5.2万 |
16万 |
部門配当額 | 22.5万 | 30.1万 | 26.3万 | 5.2万 | 16.0万 |
惣菜部は100%を下回ったことから、マイナスの貢献率になりますので、「成果には値しない」……という考え方ですので成果額はマイナスとなります。
マイナス部分は均等額から(▲10.8万円)マイナスされますので、
16.0万ー10.8万=5.2万……で、惣菜部の賞与配当額は5.2万円となります。
惣菜部の成果額10.8万がマイナスされた分は、成果額20万に上乗せされますので、
20万+10.8万=30.8万
30.8万が上乗せ部分の成果額となり、100%を超えて、達成した部門が貢献率によって配分されるということになります。
要するに、粗利額を達成しないと、上乗せ部分の成果額がないのはもちろんのこと、均等額から削られてしまう……ということです。
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<スタッフに配当する算出方法の基本的な考え方>
上記の算出方法は、あくまで基本的な考え方であって、そのまま生かすことはできません。
なぜならば、それぞれの部門にいるスタッフの頭数が違うからです。
ただ単に、上記で配分された配当額を部門の頭数で割るとすると、たくさんのスタッフをかかえている部門は、少人数の部門より、一人当たりの配分額が少なくなってしまう可能性があります。
これでは、公正公平とは言えません。
そこで、評価ポイント、1ポイント当たりの金額を、部門の貢献度に応じて配当額として設定し、それぞれの部門に配属される全員分のポイント数分を支給配分する方法をとります。
わかりやすく説明すると、下記の図を見てください
成果額500万
精肉部 | 青果部 | 鮮魚部 | 惣菜部 | 食品部 | 小計 |
80P (20P ×4人) | 120P (20P ×6人 | 100P (20P ×5人) | 100P (20P ×5人) | 100P (20P ×5人) | 500P (20P ×25人)
|
仮にすべてのスタッフの評価ポイントが20Pだとして、それぞれの部門には配属されている人数を掛けると、それぞれの部門の総評価ポイント数が算出されます。
そして、全てのスタッフのポイントを合計すると、ここでは、全スタッフ25人で、20Pずつの評価を受けているので、店舗の総ポイント数は500Pとしています。
そして、成果額をわかりやすく500万としてみます。
成果額(500万)を全スタッフポイント数で割れば1ポイントあたりの平均の金額が算出されます。
500万÷500P=1万円(1ポイント当たりの平均金額)
そして、この1ポイント当たりの金額で、部門の貢献率を掛けて、実績に応じて格差をつけた、部門に配分される金額を、1ポイント当たりの金額で算出します。
1ポイント当たりの平均金額が1万円で、5部門ありますので全体で5万円ということになります。
やはりここでも、この全体の金額5万円を、成果額と均等額に分けます。
ここでも、成果額を20%、均等額を80%に設定してみます。
(5部門金額合計)(成果率)
成果額 =5万×20%=1万円
(5部門金額合計)(均等率)
均等額 =5万×80%=4万円÷5部門=0.8万円。
この成果額(1万円)に、各部の貢献率を掛け、均等額を足すと各部門の実績に応じた1ポイント当たりの配当金額が算出されることになります。
まず、各部の達成率が下記のようだと仮定して、貢献率を算出してみました。
(達成率) (伸び率)(伸び率計) 貢献率
精肉:101%-100%= 1%÷5%= 0.2%
青果:101%-100%= 2%÷5%= 0.2%
鮮魚:102%-100%= 2%÷5%= 0.4%
惣菜:102%-100%= 2%÷5%= 0.4%
食品: 99%-100%=▲1%÷5%=▲0.2%
小計 5%
次に、この貢献率に、成果額を掛け各部の成果額を算出し、均等額を足してみます。
貢献率 (成果額) (各部成果額)(均等額)各部1p当たり金額
精肉: 0.2%×1万円= 0.2万+0.8万=1.0万
青果: 0.2%×1万円= 0.2万+0.8万=1.0万
鮮魚: 0.4%×1万円= 0.4万+0.8万=1.2万
惣菜: 0.4%×1万円= 0.4万+0.8万=1.2万
食品:▲0.2%×1万円=▲0.2万+0.8万=0.6万
小計 5.0万
わかりやすく下記の図のように表記してみます
5部門ポイント合計金額5万円
精肉 | 青果 | 鮮魚 | 惣菜 | 食品 | |
成果額 1万+0.2万 | 0.2万 | 0.2万 | 0.4万 | 0.4万 | 0.0万 |
均等額 4万 | 0.8万 | 0.8万 | 0.8万 | 0.8万 | 0.8万-0.2万 |
各部 1ポイント当たり 配当額 | 1.0万 | 1.0万 | 1.2万 | 1.2万 | 0.6万 |
成果額は、1万円でしたが、食品部が達成率100%に満たないことから、貢献率がマイナスとなりますので、均等額からその割合が減らされ、その分0.2万成果額に上乗せされ、成果額は1.2万を各部に割り振る形となっています。
この各部1ポイント当たりの金額を、
それぞれ各部の総ポイント数に掛ければ………部門の配当額に
それぞれスタッフのポイント数に掛ければ……個々の賞与配当額に
なります。
(各部1P当たり) (各部総ポイント)(部門配当金額)(人員数)(1人当たり配当額)
精肉:1.0万 × 80p = 80万 ÷ 4人 = 20万
青果:1.0万 × 20p =120万 ÷ 6人 = 20万
鮮魚:1.2万 × 20p =120万 ÷ 5人 = 24万
惣菜:1.2万 × 20p =120万 ÷ 5人 = 24万
食品:0.6万 × 20p = 60万 ÷ 5人 = 12万
今回は、わかりやすく、全員同じ評価ポイント数(20p)で算出しましたが、本来、個々にポイント数に差がでるでしょうから、個々の評価ポイントに、部門に配分された1ポイント当たりの配当額を掛ければ、それぞれのスタッフの賞与配当額が算出される格好です。
例えば、精肉部の80p獲得した4人のポイント数がそれぞれ、下記のようだとしますと、それぞれの賞与金額が右のようになるわけです。
精肉部スタッフ賞与配当額
(個々のポイント数)(部門1p当たり配当額) (個々の賞与配当額)
Aさん:30p × 1万 = 30万円
Bさん:25p × 1万 = 25万円
Cさん:15p × 1万 = 15万円
Dさん:10p × 1万 = 10万円
合計 80万円
このような考え方をもって配分にすれば、しっかりと格差をつけて、公正公平に賞与額を配当することができます。
そしてスタッフに、「どのように賞与額が決定されているか」を、このシステムを明確に示し説明していけば、実績を達成させることの重要さを理解し、自分たちの取り分を増やすために、士気向上を図れるのではないでしょうか。
では次は実際に、具体的な数値で最初からシュミレーションしてみましょう。
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