「粗利ミックス」を考えて販売戦略を構築する方法
それぞれの部門ごとに粗利益率が確保できるカテゴリーと、その確保が難しいカテゴリーをもっていると思います。
どんなカテゴリーや商品が利益に貢献しているのか……、
また、売り上げに貢献しているものはどのカテゴリーか、どんな商品か…を知ることが大切なことです。
そこをしっかりと把握して、販売戦略を練る必要があります。
それらを「粗利ミックス」して利益を確保しながら売上を上げる具体策を、精肉部を例にとって解説してみたいと思います。
売上を上げる「粗利ミックス」を相乗積で分析する方法についてはこちらから
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精肉部門の一般的な粗利率相場は28~30%くらいです。
トータルでこの粗利率が確保できれば良いわけです。
しかし、精肉部の中でも28%の粗利率の確保が難しいカテゴリーと、40%以上稼げるカテゴリーがあります。
精肉部には大きく分けて、牛肉・豚肉・鶏肉・加工品(ハムウインナー)などのカテゴリーがあります。
加工品(ハウ・ウインナー)の戦略
ハムウインナーなどは主にメーカー加工品で、食品・グロサリー部門と同じく、仕入れたものをそのまま店頭に並べて販売するだけですから、おおよその粗利額は決まってきます。
だいたい一般小売価格の30%くらいの粗利額ではないでしょうか。
このカテゴリーはこれ以上粗利率を確保しようとすると、メーカーを泣かせることになってしまいますので、特売協力でもない限り仕入れ原価を下げてもらうのも、小売価格を高く設定することも難しく、粗利率を30%以上確保するのは困難でしょう。
(インストアーパックの自社製品で粗利率の稼げる商品をたくさん持っていれば別ですが…)
このハムウインナーのカテゴリーは、精肉部の平均粗利率は稼げますので、特に粗利益率を下げるようなことにはなりません。
メーカーに特売協力してもらい粗利率を確保しながら拡販していけば、粗利益率を下げることなく売上を上げることができるので、これを維持することで良しとします。
(インストアーパックの粗利率のとれる自社製品を開発していくことは進めるべきですが……)。
牛肉・豚肉・鶏肉の戦略
その他の「牛肉・豚肉・鶏肉」に関しては、戦略方法によって粗利率が変わってきます。
どちらかというと牛肉は粗利額が稼ぎにくいカテゴリーですが、豚肉・鶏肉は粗利益が確保しやすいカテゴリーです。
特に鶏肉は少しグレードが上になる付加価値商品をメインで販売すれば40%以上の粗利率が確保できるカテゴリーとなります。
「牛肉・豚肉・鶏肉」すべて平均的に30%の粗利率を掛けて売価設定すると、「豚肉・鶏肉」は安いイメージになりますが、「牛肉」は高いイメージになり、「牛肉」が売れる店にはならないでしょう。
牛肉は戦略的に販売していくと、どうしても粗利率が下がりやすくなりますが、単価が高いため売上を確保するには絶大なる威力を発揮します。
反対に鶏肉は、粗利率が稼げても単価が低いため、いくら量販しても売上はたかが知れてます。
これらの特性を生かしてマーチャンダイジングを構築して、売上を向上させる戦略を考えます。
売上を向上させるには、豚肉・鶏肉をいくら一生懸命量販しても、単価が低いのと、販売点数を増やしにくい特性があるので、なかなか売上向上には貢献しません。
豚肉というものは、売上を上げるために…と豚肉売場を広げても、広げた分のスペースに対する売り上げ効果はあまり感じられないでしょう。
広げれば広げるほど、1尺当たりの平均売上が下がる結果になるだけです。
なぜこのような結果になるか……というと、
豚肉を購入するときのことを考えてみてください。
豚肉はしゃぶしゃぶ用や焼肉用としての需要もなくはないですが、豚肉の用途は大半が普段使いのものが多いです。
普段使いのものとは、それぞれの料理に使用されるスライスされた豚肉…ということです。
スライスされたものを選ぶなら、
バラ肉は脂肪分が多く、特定の方が選ぶので別だとしても、大半の方はロース・モモ・肩ロース・肩肉などその日に特売されているもので、一番安くなっているものであればどれでもいいのではないでしょうか?
家庭で400gの豚肉スライスが必要であれば、一番安い部位で400g選ばれる……という傾向があるということです。
豚肉売場が広かろうが狭かろうが、豚肉売場全体の中から最低限必要な数量しか買ってもらえないことが多いのです。
国産豚であれ輸入豚であれ、ほとんどその日に98円前後で特売されているものが集中して売れるのではないでしょうか!
豚肉売場を広げて「黒豚コーナー」を設けるのは良いと思いますが、輸入豚肉の種類を増やすと売上単価が下がります。
これは、「国産豚肉」と「輸入豚肉」の味の差がそれほどみられないことから、国産豚肉を購入していた方の中から、輸入豚肉にシフトされてしまい客単価が下がるからです。
ですから輸入豚はあれもこれも…と安いアイテムを増やさずに、単品で特売を仕掛け、定番品はしっかりロスなく売り切っていく方法がおすすめです。
要するに豚肉は「あれもこれも」……という需要がないので、豚肉の売場を広げても、全体の中から、安いものを必要数しか購入されないために売上が伸びにくいのです。
豚肉売場は、必要最低限のアイテムが並ぶスペースの広さにして、商品回転率を上げることで売上を上げ、しっかりと利益率35〜38%くらいは確保していくことが望ましいと思います。
鶏肉も単価が低いため、価格訴求をして量販体制をとっても、売上金額はいくらも稼げません。
なぜならば、昨今では買いだめする傾向も少なく、必要数しか買ってもらえないため、トータル的に鶏肉の売上単価を下げるだけの結果になってしまうからです。
ですから鶏肉売場を広げても豚肉と同じ結果になります。
鶏肉も日替わりで特売品を打ち出しながらも、しっかりと利益率40%くらいは確保していくほうが良いでしょう。
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牛肉はごちそうメニューとして、「すき焼き・しゃぶしゃぶ・ステーキ・焼肉・シチュー」をするための需要があります。
牛丼や炒め物などの普段使いの用途にも需要があります。
品質を選択する上において高額な黒毛和牛の需要もありますし、低価格の輸入牛の需要もあります。
広範囲の客層に対して供給できるカテゴリーです。
ですから売場広げるのであれば豚肉・鶏肉より牛肉の売場を広げて、さまざまなお客様に対応できるアイテム数を構築したほうが良いでしょう。
そのほうが広範囲のお客様に対応でき売上客数upにつながりますし、売上単価が高額になるため売上がいっきに向上します。
しかしデメリットとして、牛肉は商品回転率が豚肉・鶏肉より低いため、廃棄ロスが多くなる傾向があるのも否めません。
売れる数量の把握を怠り作りすぎてしまうと、値引きロスや廃棄ロスが増えてしまいます。
かといって何日もかけて大事に販売していると、鮮度劣化が見た目ですぐにわかりますので、すぐに売場の鮮度感がなくなります。
それに黒毛和牛などは、利益率を確保しようとすると高額になり売れ行きが鈍り、売りやすい金額でリーズナブルに価格設定すると粗利益率の足を引っ張ることになります。
牛肉を戦略的に拡販していくと牛肉の粗利率は20~22%くらいになってしまうでしょう。
でも売上を向上させることを考えるには、粗利率がとれなくても高額な牛肉……特に黒毛和牛の品揃えをを充実させて、牛肉の売上を伸ばす戦略をとるべきでしょう。
要するに、売上は牛肉で稼いで、粗利率の足を引っ張る部分は豚肉・鶏肉でカバーするようにして、トータルで28%~30%の粗利益率を確保できるようにします。
下の表は月商2000万の精肉部の売上・利益バランスの一例です。
精肉部 月間売上・利益(単位:万円)
売上 | 売上構成比 | 粗利益率 | 相乗積 | |
牛肉 | 700 | 35.0% | 22% | 7.7% |
豚肉 | 550 | 27.5% | 35% | 9.6% |
鶏肉 | 350 | 17.5% | 40% | 7.0% |
加工品 | 400 | 20.0% | 30% | 6.0% |
合計 | 2000 | 100% | 30% |
これは日々、牛肉・豚肉・鶏肉・ハムウインナーのカテゴリーごとに仕入れと売上を明確に分け、それぞれに売買差益を算出できるようにして管理します。
これらのように売上金額が稼げて需要のある牛肉のようなカテゴリーで売上を稼いで、粗利率を高く設定できる豚肉・鶏肉のようなカテゴリーで粗利益率を稼ぐといいと思います。
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