牛肉スペック化のすすめ

牛肉スペックはロスを出さずに、切りたての鮮度感のある、商品アイテムが豊富な牛肉売り場を作ることができます。

その牛肉スペック化をするメリットについて詳しく解説します。

<従来通り、牛肉をセットの状態で仕入れ、スペック化しないと……>

牛肉の日々の売上が30万円以上ある店では、和牛等、それぞれの部位(シンタマ、肩ロース等)のセット状態で、大きい真空パックの保存状態で仕入れたまま、さまざまな部位を一日のうちに売り切ることが出来ます。

しかし、牛肉の一日の売上が、20万円もいかない店は、このような大きい真空パックの保存状態で仕入れ、赤身系のモモ肉だの霜降り系の肩系の部位など、あっちもこっちも真空パックを開けてしまうと、ロスが発生するため、あれもこれも使うことができません。

もしそのようなことをしてしまうと、一日のうちに全て使いきれず、商品化できなかった部分はミートラッパーなどにくるんで冷蔵庫に保管することになります。

そして翌日、その使いきれなかった牛肉の部分を商品化するのですが、真空パック状態で保存されていない牛肉は、1日の時間が経過すると、かたまりの内側に黒くシミのようなものができてしまいます。 精肉業界では「メガネをかいてしまった」と言います。

 

これは、「腐ってしまった」とか「臭くなってしまった」というものではありません。 食べることには全く問題はありませんが、そのまま商品化したときに、どうしても黒い部分が目立ってしまい、鮮度が悪く見えてしまうのです。

ですからやむ無く商品化をする前にかたまりの表面を1センチほど削った部分を廃棄してから商品化をしなければならなくなり、それがロスとなるのです。

ですから、牛肉の一日の売上が20万円もいかない店では、あちこちの真空パックをあけずに、ひとつの部位の真空パックをあけ、その部位だけで色々な商品アイテムを作るしかないのです。

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例えば、今日はウチモモの真空パックをあけて、すき焼き用、しゃぶしゃぶ用、ステーキ、焼肉用、カレーシチュー用、牛肉の切り落としなどを作るとします。

すると、このウチモモだけで、今日の牛肉売上の販売数量以上の商品ができてしまうので、当然その他の、霜降り系の商品アイテムが出せず、牛肉売場が真っ赤かです。

この日に牛肉を買う目的で来店されたお客様は、赤身系を好むお客様は良いかもしれませんが、脂ののった美味しい霜降り牛肉を目当てに来店されたお客様はガッカリです。

このお客様は、次回牛肉を買おうとするときは、いつも霜降系の牛肉を販売されている店に行くようになることでしょう。ますます牛肉の売上が下がります。

 

<牛肉のスペック化のメリットは>

そこで登場するのが、牛肉のスペック化です。 20年ほど前から、牛肉卸業者が、牛肉半身(半丸)を細かい部位に小分けして真空パックしてくれるようになりました。

それぞれの部位(シンタマ、肩ロース等)をさらに、こちらの好みに応じて、分割し真空パックをして納品してくれます。

多少の手間代金と歩留まりにかかわる費用は発生しますが、歩留まりに関して、脂身等の廃棄する部分は、自分達で整形しても発生するものですし、手間代金は、手間がかからず商品を作る時間が短縮される分で、売ることに専念できる時間が増えたと考えれば、高いものではありません。販売することに力を注ぐことができるメリットが発生するのです。

 

それに、ひとつひとつの部位が1Kgから2kg位に小さく真空パックされることで、真空パックをあけたものはすべて商品化することができ、その都度、使い切ることができるメリットがあります。

それに最大のメリットは、霜降り系の商品アイテムから赤味系の商品まで、さまざまな商品アイテムを毎日売り場に出すことができることです。しかも一日で売り切れる数だけです。

毎日売り切れる数だけしか作りませんので、鮮度が非常によくなります。

お客様にしてみれば、新鮮な商品が豊富にあることで選べる楽しさが得られます。

日々の売り場戦略を考える上においても、スペック化をしていると「今日はこういう売り場展開にしたい……」などと、売り場構成から考えることができ、特に売り込みたい商品を特定したり、どんな商品構成にするか、売り場レイアウトを自由自在に考えてあやつることができます。

これが、スペック化をしないと、売り場レイアウトから商品構成を考えることができません。

なぜならば、セット状態で仕入れた大きな牛肉の部位の真空パックをあけるとすべて使い切らなければならないため、そこから作ることのできる商品アイテムと、できたパック数に応じて売り場のフェイスどりを考えていく方式になってしまうからです。まったくの逆発想となるのです。

これは先程説明した通り、すべてのお客様に適した商品を売り場に出すことができませんので、お客様主義の売り場でなく、作業場のご都合主義……となってしまいます。

 

<牛肉スペックの使い方>

例えば、赤味系の商品アイテムを作る場合

「今日は、ももステーキと赤味の焼き肉用、それに、赤味のしゃぶしゃぶ用と赤味の切り落としを作りたい……。赤味のすき焼き用は昨日の売れ残りが2パックあるから、それは作らずに、2段目1フェイスにして売り切ってしまおう」

……とした場合に、

「では今日は、シンタマのシンシンでステーキを3パック作って残りは焼き肉用にして、外モモのシキンボウでしゃぶしゃぶを15パック作り、下段で特売して、残ったシキンボウと肩のウワミスジで赤味の切り落としを作ろう」

そして、端材がでたらカレー用を作ります。

その他霜降り系の商品アイテムは肩のザブトンを使って、ステーキ3パックと残りはしゃぶしゃぶ用とすき焼き用にそれぞれ3パックずつ作り、残った部分は少し硬めの部分になるので、切り落としの材料にまわそう……などとします。

このように売り場レイアウトを考え、昨日の売れ残り具合も加味しながら、今日はどんな商品を作るかを考え、そこから、材料は何を使うか……売れる数を把握し、その材料で作れるパック数をはじき出し、日々できるだけ売り切ってロスをなくしていくように考えて売り場戦略を立てていきます。

 

スペック化をすると、ロスなく、切りたての鮮度感のある豊富な商品アイテム構成で、魅力ある売り場作りをすることができます。

 

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<お肉屋さんの時代の流れ>

昔からお肉屋さんをやっている職人さんは、「こんなの邪道だ!」などと、新しいやり方を受け入れられない方もいます。

1980年頃のお肉屋さんは、牛肉でも豚肉でも半身(半丸)を骨が付いた状態で仕入れ、そこから骨を抜き、それぞれの部位(肩、肩ロース、バラ、ロース、ウチモモ、シンタマ、外モモ、ラン、スネ等)に分け、使うときに整形してから商品化するなど、お店で商品化するまでの仕事の量がとてつもなく多かったものです。

しかし、一日に売れる量はわずかで、黒くなった部分を削りながら、少しずつ商品化していました。

それが次第に1990年頃からは、骨が抜かれた状態でそれぞれの部位ごとに真空パックされたものが仕入れられるようになり、1995年頃にはすでに、さらに細かくスペック化し真空パックされた状態で納品してくれる時代になりました。

豚肉においても、脂や筋などまできれいに整形されたものが朝一番で納品され、作業場ではそれをスライサーや包丁で切って商品化するだけでいいような時代になりました。

販売量も昔と今では全く違います。昔よりお肉の消費量が増え、販売量はかなり増えています。

スーパーマーケットの精肉部の作業場では、骨を抜いたり、整形をしたりすることより、いかに売るか、いかに量を販売できるかにかかってきています。

時代が変われば何でも便利になり、効率が良くなってきます。

「昔はこうだった」など言って昔のやり方に固執していると、あっという間にとり残されてしまします。いいものはどんどん現場に取り入れて、作業工程から見直しましょう。

一度この方法を習得マスターすると、昔の牛肉の扱い方ができなくなります。

是非とも試行錯誤してみてください。

 

牛肉 内モモのスペックの作り方と商品化の方法

牛肉 外モモのスペックの作り方と商品化

牛肉丸モモ(シンタマ)のスペックの作り方と商品化の方法

牛肉ランプ肉のスペックの作り方と商品化の方法

牛肉ロース・ヒレ肉のスペックの作り方と商品化

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牛肉シャクシのスペックの作り方と商品化の方法

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