売上を上げる「粗利ミックス」を相乗積で分析する方法
商売は販売しているものによって、基本的な粗利益率の設定水準が異なります。
粗利益率をしっかり確保しながら、売上を上げる「粗利ミックス」についての考え方を解説します。
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商品の粗利ミックス
衣料品や飲食店であれば、トータル的に60~70%の粗利益率をかけて売価設定をし、40%くらいの粗利益率を確保なければ商売として成り立たないという世間相場がありますが、スーパーマーケットでは、23~30%の粗利率を確保するのが関の山です。
トータル的にその辺りの粗利率が確保できる売価設定で、競合店とせめぎ合っているのではないでしょうか。
23~30%の粗利率を確保しなければならないから……といって、すべての商品に仕入れ原価から一律23~30%の粗利率のかけて売価設定をするわけではありません。
40%~50%の粗利益率をかけるものもあれば、10%くらいしかかけられないものもあります。
特売品の目玉商品ともなると、原価を割って赤字で販売するものもあります。
要するに赤字の商品があっても、それを補う粗利益率が高い商品がたくさんあって、トータル的に23~30%の粗利益率が確保できれば良いわけです。
この「粗利ミックス」といわれるマネジメント・コントロールをうまくやらないと粗利益率が圧迫され、損益分岐点にも満たない粗利額となり、経営赤字に陥ることもあります。
例えば、
集客数を向上させたいがためにチラシをまく回数をやたらと増やし、赤字商品を限界数量以上にばらまいたり
粗利益率を確保できる商品を育てないで、なんでもかんでも安く販売してしまったりすることです。
これはスーパーマーケットのなかでは、おもに食品・グロサリー部門や菓子パン部門など、仕入れた商材をそのまま販売するものに関して起きうる問題です。
競合店と同じ商品を販売することも多いため、価格を見比べられてしまうからです。
いくら集客数を増やしたいからといっても、単純に価格を下げて集客するのは自分の首を絞めるだけです。
それぞれの店の売上規模によって赤字で奉仕できる額はおのずと決まってきます。
粗利額の稼げる定番品で粗利益率をどれくらい確保できるかによって、赤字で奉仕できる金額は決まってくるからです。
ですからトータル赤字額の限界値を把握して、しっかりと販売数量計画を練ることが重要です。
商品には「粗利を稼ぐもの」と「薄利多売するもの」があり、それらの「粗利ミックス」をしてトータル的に目標としている粗利を達成するのと同様に、もっと大きな枠の「部門」というくくりの中で「粗利ミックス」を考えてみたいと思います。
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部門の粗利ミックス
食品・グロサリー部門は特売の目玉商品を赤字で出品するなど「客寄せパンダ」の役割の担うことが多いので、粗利率は20%くらいが相場の部門です。
生鮮・惣菜部門では、仕入れたものをそのまま販売するものは少なく、加工して販売するものが多いため、競合店と商品グレードなどで差別化でき粗利率も確保しやすい部門です。
食品・グロサリー部門などはトータル粗利益率が20%くらいなので、生鮮・惣菜部門で粗利率を28%~40%確保すれば店全体で25~30%の粗利率を確保できます。
しかし生鮮・惣菜部門が粗利益率が高いからと言っても、それらの部門の売上構成比が低ければ店全体で25~30%の粗利益率を確保するのは難しいでしょう。
下記の表は食品部門の売上が高く、生鮮・惣菜部門の売上がまだまだ低い例です。
店のトータル粗利率は24.3%と25%を下回っています。
これらの分析をするのに指標となるのが「粗利ミックス」です。
店舗内で、どの部門が貢献度が高いかを「粗利ミックス」で算出し「貢献度合い(相乗積)」を見ます。
粗利ミックスは「売上構成比×粗利率」で計算します
例えば下記のような実績値だとして「利益貢献度(相乗積)」を算出します
相乗積の合計がお店のトータル粗利率になるわけです。
部門 | 売上 | 売上構成比 | 粗利益率 | 利益貢献度(相乗積) |
精肉 | 1300万 | 13% | 28% | 3.6% |
青果 | 1500万 | 15% | 25% | 3.7% |
鮮魚 | 1400万 | 14% | 27% | 3.8% |
惣菜 | 800万 | 8% | 40% | 3.2% |
食品 | 5000万 | 50% | 20% | 10.0% |
合計 | 10000万 | 100% | 24.3% |
ですから粗利率の高い「生鮮・惣菜部門」の売上構成比を伸ばすなどの方策をとれば、店のトータル粗利率は上がる要素を秘めているわけです。
粗利ミックスの考え方
これを見て考えることは、
鮮魚部が利益貢献度が高いので鮮魚売場を広げようか……。
惣菜部の粗利率が高いので惣菜売場を広げようか……。
食品部より精肉部の方が粗利率が高いので、そこを伸ばすようにしようか……
などと、販売戦略の打つ手を考えます。
粗利ミックスをうまくやりくりすることによって、しっかりと粗利益率が確保できるのです。
しかしこの数値はあくまでも目安としてみたほうがいいです。
上の数値でいくと食品部が「利益貢献度(相乗積)」が高いからといって、他の部門を縮小して食品を拡販して失敗する例もあります。
これから伸びしろのある部分がどこなのか…を見極めて、そこを徹底的に伸ばすことが重要です。
例えば、
〇〇部の粗利はもっと伸ばせる要素があるのではないか……
〇〇部の売上がもっと伸ばせる要素があるのではないか……
〇〇部の粗利率をもう少し下げてでも、もっと売上を伸ばすべきではないのか……
などです。
あくまでも相乗積は「どこをどのように改善したらこのような数値になる」……を見るために使う算出方法です。
相乗積で算出された数値が利益貢献度だからといって、単純に「低い部門の相乗積の数値を上げるにはどうしたら良いか」……を見るものではありません。
その店その店によって強い部門弱い部門が異なります。
相乗積が低くても売り上げや、客寄せに貢献している部門かもしれません。
相乗積で分析して戦略を練りことは絶対に欠かせませが、その数値だけで販売戦略の方向性を決めるべきではないと思います。
おすすめの方法は、
精肉部などの粗利率の高い生鮮・惣菜部門の売上を伸ばす方向で検討したほうが良いと思います。
なぜならば、商品力をつければ競合店との差別化ができるからです。
簡単な方策ではありませんが、やりようによっては売り上げも粗利額も伸ばせる要素をたくさん秘めています。
競合店と同じような商品グレードの商品を扱わず、価格で競争しない方法を見出すことが大事です。
競合店との差別化を価格ではなく、自店舗の商品の付加価値の価値観の魅力をアピールして、固定ファンを増やす戦略が重要かと思います。
「粗利ミックス」を考えて販売戦略を構築する方法についてはこちらから
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