人事考課「査定評価」と「フィードバック」の方法は?
<評価査定についての不安要素>
まず、人事考課査定評価をしていくにあたって、スタッフにはいろいろと不安になる要素が、たくさんあると思います。まずその「スタッフの不安要素」をピックアップしてみます。
スタッフの人事考課査定についての不安は、大きく分けて次の3つ
◆何をどのように評価されるの?
◆評価点は、どのように計算されるの?
◆誰がどのように評価するの? ……であります。
そして、スタッフが心配すること、疑問に思うこととして、代表的なものをあげてみます。
◆評価によって、格差がつくことは良いことだが、実際はみんな同じような評価になり、格差などつかないのではないか? つまり、やってもやらなくても一緒……?
◆上司は本当にキチンと見てくれているのか?
◆上司は、個々の好き嫌いによって、点数をつけることがあるのでは?
◆評価する考課者によって「甘い・厳しい」の偏りが大きいのでは?
◆ごますりのうまい人間が良い点を取れるのでは?
これらの問題点を整理すると、ほとんどが、上司はキチンと、公正公平な目線で自分達を見てくれているのか?……に繋がってきます。
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考課者である上司の立場からは、 「厳しい評価をして、部下が気を悪くして、仕事に支障をきたすのではないか?」…などと、率直な意見が言えず、全員甘い評価になってしまう……など。
このようなことは、あってはならないのですが、実際、起こりうる事案であります。
考課査定をするにあたって、これらのことを克服できるものにしなければなりません。
そのために、考課者も真摯に、常日頃から一人ひとりにしっかりと目を向け、スタッフ個々のファイルを作り、書面で記録を残すくらいの労力と時間を、おしみなく費やさなければなりません。
そして、個人面談の際、人事考課査定を、ただ手渡すのではなく、このファイルを用いて具体的に話し合いをし、納得感を追求していかなければならないと思います。
「何が良くて」
「何を改善し、どう進めていくか」……など、
将来に渡っての目標まで、言葉で伝えていかなければならないのです。
誰でも、「今後どうすればいいかわからない」ということは、不安なものであるし、どう行動したら良いかわからないので、動けなくなってしまうのであります。
これを知らしめてあげることが、管理職者の重要になる業務であるのです。
人事考課は、その方法を明らかにしないで、行われることが多いようですが、不明確なままでは、「何でこの評価だったのか、今後どこをどう直して、どう仕事に取り組んでいけばいいのか」……など、せっかく評価したことが生かされません。
ですから、 評価される手順や、評価される内容・方法などのシステムを、はなっから明確にした方がよいと思うのです。
<査定評価とフィードバックの手順>
これらの不安を払しょくし、個々の目標が描けるようにするための「査定評価とフィードバックの手順」……について解説します。
これを行うには日々、一人ひとりをしっかり観察して、評価シートに記入しておくことが当然必要になります。
そして、一次評価者、二次評価者……と、二人、三人の目で評価基準を見直し、評価する眼を揃え、公正公平に評価が行われるようにします。
そして最終決定された評価について、個人面談(フィードバック)を行い、納得を得られる説明をしていきます。
個人面談で、フィードバックをすることとは
≪目的≫
◆ヤル気にさせるため(士気向上)
◆個人の良いところ、まだまだたりないところを第三者の客観的な感想を知り「なにかしらの気付き」を得てもらうため
≪ポイント≫
◆個人の良いところ、たりないところを具体的に、ひとつひとつ確認し合うこと
◆叱るのではなく、思いやりをもってアドバイザーに徹すること
◆1人当り30分~1時間くらいの時間を割くこと
◆一対一で、落ち着いて話せる場所で行うこと
≪進め方≫
◆雰囲気をやわらげ、面談の意図を伝えます。
◆自己評価の理由をたずねます 。
◆考課者の評価の理由を説明します。
(良いと思った理由・まだまだ評価するに至らない理由)
◆個人の可能性を示し、ヤル気促進にもっていきます。
◆自己目標の設定をさせます。
……これらをしっかりと行い、公正公平に評価をし、フィードバックし、納得させていくまでがひとつの手順となります。
では誰が誰を評価し、どのようにフィードバックをするのでしょうか?
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<査定評価の手順>
①すべてのスタッフが、個々に自己評価をします。
(自分で自分の点数をつけます)
これは、自分の仕事を、自身の正直な心で見つめ直す貴重な時間になることを意味します。
次に、部下の仕事を一番把握している意味で、直属の上司が、自分の部下を評価します。
②各部門の主任が、自部門のスタッフを評価査定をして、自分の評価査定と一緒に ………部門長へ提出します。
③部門長は、自部門のスタッフ全店分の評価査定をします。
部門長は、 自部門の各店主任から提出された評価査定表を大局的に見て、各店主任の評価に甘い・辛い…の格差がなく、評価する眼が均一で、公正公平なものかもチェックします。
当然、部門長は、全店のスタッフの能力・力量を把握していなければなりません。
そうでなければ、このチェックができないことになります。
④部門長は、自部門の主任を全員召集します。
主任以下スタッフの評価決定をするため、部門ごとに 「部門別査定均一合議会」を開きます。
この「査定均一合議会」で、
・各店主任の評価の眼に甘い・辛いの開きがないか?
・査定評価の基準となるものは同一か?
・各点数の価値観が同一になっているか?
…など、部門長・主任でとことん話し合い、統一化を図ります。要は、評価する眼を揃える作業をするのです。ここで決定された査定評価が、スタッフの第一次評価となります。
⑤部門長は、自部門の査定評価を各店店長に提出します。
部門長は、 各店主任の査定評価をし、各店スタッフの第一次評価と合わせて、それぞれの店の店長に提出します。部門長も、自身の査定評価をし常務へ提出します。
⑥店長は、自店のスタッフの査定評価をします。
店長は、各部門長から提出された、自分の店の全スタッフの査定評価を大局的に見て、 各部門長の評価に甘い・辛い…の格差がなく、評価する眼が均一で公正公平なものかチェックします。
当然、店長は、自分の店のスタッフの能力・力量を把握していなければなりません。
そうでなければ、このチェックができないことになります。
⑦店長は、各部門長を召集します。
店長は各部門長を招集し、「各店別査定均一合議会」を開きます。
この「査定均一合議会」で
・部門ごとの評価の眼に、甘い・辛いの開きがないか?
・査定評価の基準となるものは同一か?
・各点数の価値観が同一になっているか?
…など、部門の違いによる不公平が生じないように統一化を図ります。
店全体での、評価する眼を揃える作業をするのである。
店長は、これら自分の店のスタッフの査定評価表と、店長自身の評価査定を合わせて、常務へ提出します。
ここで決定された査定評価が、スタッフの第二次評価となります。
⑧常務は各店店長を招集します。
常務は、各店店長を招集して「全店査定均一合議会」を開きます。
この「査定均一合議会」で上記同様に、
・店ごとの評価の眼に、甘い・辛いの開きがないか?
・査定評価の基準となるものは同一か?
・各点数の価値観が同一になっているか?
…など、店舗の違いによる不公平が生じないように統一化を図ります。
昇給、降給額に伴い、各部門の労働分配率が適正に維持されるかを確認します。
そして、各店店長、部門長の評価を社長へ提出します。
このような繰り返しを行い、評価の眼が揃うように、社内の相場づくりをしていくのであります。
最初は、大変な作業になりますが、何回か行うごとに、これらが自然の流れとして確立され、スムーズに推進できるようになるものです。
評価査定が終わったらこれを、それぞれのスタッフに、評価内容のフィードバックをしなけばなりません。
人事考課査定は、評価をしたらそれで終了・・・としている企業が多いのではないでしょうか?
これでは、片道通行であり、スタッフの納得は得られないのです。
学校の通知票のように、評価表を紙面で渡すだけでもダメです。
評価結果を必ずフィードバックしなければなりません。
「何が良くて」
「何を改善しどう進めていくか」
・・・など、 将来に渡っての目標まで、言葉で伝えていかなければならないのであります。
誰でも、「今後どうすればいいかわからない…」ということは、不安なものですし、どう行動したらいいかわからないので、動けなくなってしまうのであります。
では、フィードバックの手順を解説していきます。
<フィードバックの手順>
まず、社長・常務で最終決定された人事考課査定を、店長・部門長が確認し、不明なことがあれば、常務に理由を確認し、納得のできる答えを用意します。
①店長・部門長は、
人事考課査定の決定事項を各店に持ち帰り、主任へ報告します。
②主任は、
自部門のスタッフにフィードバックするための、個人面談の準備をします。
それぞれに伝えなければならないことを、整理するのであります。
準備ができたら主任は、個人面談スケジュールを作り、一人ずつ丁寧に、評価内容の理由から個人目標の設定まで話をして、士気向上を図ります。
これにより個人が「自身の強みや仕事のできばえ」を把握し、
それを伸ばしながら、弱点を補うような仕事の目標を設定させ、 自らの成長と、次期の仕事の改善に役立たせるのであります。
上司は部下に、「これを言ったら傷つくのでは……」などと、いいことしか言えないのでは困ります。
いい部分は思いっきり褒めて伸ばし、悪い部分を指摘するのは、今後の課題として、しっかりと伝えなければならないのであります。
このように、「何を」「どのように」「誰が」「いつ」評価するのかを明確にし、誠意を持って成し遂げていけば、生き生きと働ける職場を実現することができるのであります。
では次回は、どのように給与額を決定するか?「給与・賞与の決定方法」について解説します。
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