売り上げを上げるために、安売りに踏み切ることはどういうことか
「売り上げを上げるために安売りに踏み切るとはどういうことか」……説明いたします
<例えば>
300坪以下のスーパーマーケットで、客単価1600円のお店があるとします。
客単価1600円で、買上点数が一人当たり平均10点と仮定すると、一品平均単価が160円となります。
客単価1600円÷買上点数(10点)=1品平均単価(160円)
安売りとは、1品平均単価を値下げした状態のことになりますので、安売りで1品平均単価160円が100円に値下げされた状態になったとします。これで買上点数が(10点)で同じであれば、
客単価は、
1品平均単価(100円)×買上点数(10点)=客単価(1000円)になります。
この単純計算では売上が下がってしまいますが、安売りをすれば単純に買上点数が増えて、売上が上がると考えていることでしょう。では、安売りでどれくらい買上点数を上げることが可能でしょうか?
<安売りで、買上点数のUP率はどのくらい見込めるでしょうか?>
現状の客単価1600円を、安売り後一品平均単価100円で割ると、買上点数は16点になります。
現状客単価(1600円)÷安売後の1品平均単価(100円)=16点
これを、現状の買上点数で割ると、買上点数のUP率は
安売り後の買上点数(16点)÷現状の買上点数(10点)×100=160%となります。
お客様に、いつもより160%平均で上回った点数を買って頂かなければなりません。
買上点数が10点とすると、6点~7点余計に点数を購入してもらわなければなりません。
これを最低限確保しないと、売り上げは下がることになります。
まあ、これくらいは最低限UPできるというかもしれません。
しかし、ここからが肝心で、どのくらい客数UPが見込めるか……ということになります。
では、どのくらい客数をUPさせなければならないのでしょうか?
安く販売すれば、少なからず客数が増えるでしょうし、そうならないと意味がありませんので、客数のUPが見込めたとします。
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<安売りをして、客数のUP率はどのくらい見込めるでしょうか?>
現状客単価(1600円)÷安売後の客単価(1000円)×100=160%
ということは、買上点数が同じとすると、安売り前と同じ売上にするには、客数も最低限60%増やさなければならないことになります。
3000人来店客数のあるお店ですと、
3000人×160%=4800人
4800人-3000人=1800人
ですので、平均で毎日1800人のお客様を増やさないと、安売り前の売り上げに届かないことになります。これが安売りをして売り上げを上げるための最低限の数字です。
さあ!あなたのお店は、現状から「客数」か「買上点数」を160%増やすことがはたして可能でしょうか?
客数も点数も両方UPすればもう少し、この数字は低くなりますが、この数字は、現実的に可能な数字だと思いますか?
ですから、極端な安売りをして、客単価を下げるということで売上をあげることは、結構きついことがわかると思います。
客数も買い上げ点数も両方増やせるから大丈夫……と思うかもしれません。
特売した日は売上UPできるかもしれません。しかし、その分平常時の売上が落ち込み、月トータルして検証してみてください。売上が上がりましたか?
安く売って売り上げが上がるのであればどこのお店でも安く売ります。つぶれる店はなくなるでしょう。しかし現実はそう甘くありません。安売りにはいろいろと目に見えない落とし穴があるのです。
(詳しくは、「”激安な安売り合戦”で陥る落とし穴」をご覧ください)
<特売したとき買い上げ点数が増えても、売り上げが上がらない理由>
中には、「安く販売すれば、当然、上記の数字くらいの買上点数は増えるでしょう」…という人がいると思います。果たしてそうでしょうか?
特売をしたそのときだけは、当然、おっしゃるように、買上点数は格段に上がることでしょう
しかし、こういうことも考えられませんか?
例えば、醤油1L(通常価格238円)を98円で売ったとします。
原価は180円なので利益は出ません。逆に赤字になります。
しかし当然、「安いからよく売れます。」
お客様が、これを買うときの心理は、
「醤油は、家にまだ買い置きがあるんだけど、安いうちに買っておこう!」……だと思います。
醤油は安く買ったからといって、たくさん使うか?……といえば、
それは”全く変わらない”と思います。
1ヶ月に醤油を2本消費しているお宅が、「なくなるころに買うつもり」でいたのに、たまたま早目に買っただけで、長い目で見ると、そのお宅には、醤油を1ヶ月に2本という消費量は変わらないのです。
もしそんなに安い価格で特売をしていなかったら、198円くらいの特売で買ったかもしれませんし、なくなるころに来て通常価格238円で買ったかもしれないのであります。
そうすると、使う量は同じなのに価格だけ238円や198円の売り上げが98円になり「売上が、その分下がってしまう」……という結果になります。
特売日の売り上げが上がっても、月間売上は下がってしまうということです。
(もちろん、その反対で、当店で特売をしてなければ、他の店で醤油を買われてしまうこともあります。)
他に考えられることとして、普段”丸大豆醤油(348円)”を買っている人が、
「たまには安い特売の醤油を買ってみようかな・・・・」とシフトしてしまうお客様もいるでしょう。これも単純に客単価は落ちます。
生鮮食品についても同じことが言えます。
家庭の冷凍庫の進化と大型化が進み、家庭での大量保存が可能になりました。
生鮮食品でも安い時に一度にたくさん買い、小分けして冷凍し、必要な分だけ使うことのできるご時世になりました。
高度成長期は、安ければどんどん買いあさったところがありますが、現代社会では、家に在庫があれば特売で安くなっていても、
「今、急いで買わなくても、そのうちまた安売りがあるだろう!」と、
「今のうちに買っておかなくては……」と思う人は少なくなり、余計なものは買わなくなってきています。
これらのことでわかるように、極端な値下げは、
「安くした分だけ売り上げが下がる」……ということも、言えるのであります。
結局のところ、
「お客様が消費する量が増えない限り、売り上げは上がらない」ということではないでしょうか。
ですから、「価格を下げて特売するだけでは売り上げは上がらない」のであります。
逆に、「238円の醤油を買っていた人に、348円の醤油を買ってもらえたらどうでしょうか?」
これもまた高いからといっても使う量は変わりません。
しかし、売上は上がります。
ですから、価値ある美味しいものをどんどん紹介していったほうが売上の上がる可能性はあるのです。
要するに、売り上げを上げるために、安売りに踏み切っても、
「お客様の消費する量が増えるか、一品単価が上がらない限り、売り上げは上がらないのでは」……と考えられるのです。
<安売りにおける共喰い現象>
また、安売りには、共食い現象が起こることも承知しておかなければなりません。
同じような品質・価格で、メーカーが違うというだけの商品 A商品とB商品があるとします。
A商品 B商品
いずれも通常の販売数量はほぼ同じで、200個であると仮定します。
ここで、
A商品;通常価格128円を、特売価格100円にすると
300個(プラス30000円)の販売増加がありました。
しかし、
B商品は、通常200ヶ売れていたが、50ヶしか売れず、
売り上げが、
128円×(200ヶ-50ヶ)=19200円 の販売減少となりました。
そうすると、
A商品を100円で特売をした結果の売り上げ増加は、
30000円ー19200円=10800円の増加
………でしかないことがわかる。
POSデータを単品で見ると、特売したA商品が「トータルで500個売れた!売れた!」
と喜びたいところですが、全体的には、たいした売り上げ向上には至っていないことがわかります。
では、粗利を分析してみましょう。
通常価格128円のとき、仕入れ価格は90円(38円の利益)
特売価格100円のとき、仕入れ価格は80円(20円の利益)
特売で300個販売増加で、
300個×20円=6000円利益増加
B商品の150個販売減少で、
150個×38円=5700円利益減少
よって
6000円-5700円=300円
300個の販売増加があっても、
300円しか利益が増加してないことになります。
しかも、
A商品の通常販売個数の、200個分の利益が、特売によって少なくなる部分を算出すると 、
通常の利益38円-特売時の利益20円=18円(特売による利益減少額)
通常販売個数200個×18円(特売による利益減少額)=3600円(通常販売個数分の利益減少額)
300円(利益増加)-3600円(通常販売個数分の利益減少額) =マイナス3300円
……でトータルで利益減少ということになります。
このように、特売すると、本来売れていたはずの商品の売り上げ・利益の減少も把握し、トータル的に分析しなければならないのであります。
それを見なければ、「木を見て森を見ず」となります。
単品では「売れた!売れた!」 店全体の売り上げは……?あまり変わってないのでは?
これが安売りの共食い現象であります。
<スーパーマーケットの本質を再確認しましょう>
ここでひとつ断っておきますが、
「スーパーマーケットで安売りをするな」と言っているわけではありません。
スーパーマーケットだから日々、お買い得商品を提案して、価格的サービスをおこなうのは当然のことである。
むしろ、しなければならないことであります。
私がいう「スーパーマーケットが安売りだけでは、売上が上がらない」とは、
スーパーマーケットが、価格競争ばかりにとらわれて、スーパーマーケットの本質を忘れてはならない・・・ということです。
ディスカウントスーパーとは違うのだ・・・ということであります。
これらのことから、安易な安売りで売上UPを見込むことが、いかに危険か、検討の余地はあると思います。
仮に、
客数増による好成績が残せたとしても、
低価格政策をとると、
1年目、2年目は良いかもしれませんが、
3年目からは、大半が、
売り上げの伸び悩みにあえいでいることが、
よく見受けられます。
売上を上げるために安売りに踏み切るということは、売上増に至るまでの「客数増」や「買上点数増」を得ることは現実的に厳しいことが考えられるので、長い目で見ていくと、売り上げは下降線をたどる結末に陥りやすい……ということです。
どこのスーパーマーケットでも安売りにこだわっているかもしれませんが、大局が正解とは限りません。
スーパーマーケットの本質というものを再確認して、スーパーマーケットとして提供すべきことを今一度見つめ直しましょう。
詳しくは、「スーパーマーケットのあるべき姿」をご覧ください。
では次に、「安売りをやめて方向転換した成功事例(経験談)をご覧ください。
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